職組情報
職組情報No.31【工学部寄付講座における雇止め問題に関する第1回団体交渉(報告)】
2016.05.13
◆◆◆ 工学部寄付講座における雇止め問題に関する ◆◆◆
第1回団体交渉報告
2016年5月10日
副執行委員長
足立和成
本学大学院理工学研究科微生物触媒工学応用(KYB)講座(寄付講座)の教授であった原富次郎先生と同寄付講座助教1名が、3月31日に大学法人側から突然雇止めを通告されました。両先生はこの講座のプロジェクト教員として、平成26年4月から勤務されており、契約期間1年の大学との雇用契約を既に1回更新されていました。しかも前回の雇用更新時には、工学部長からの口頭での簡単な意思確認があっただけで、大学法人側による再雇用が決定されているのです。
大学法人側は、この寄付講座に寄付を申し込んでいたKYB(旧カヤバ工業)社からの寄付打ち切りを、同講座の廃止とお二人の教員の雇止めの理由にしています。しかし、講座の責任者である原先生にすら、3月上旬になるまで大学法人から寄付講座廃止の正式な知らせはなく、今年1月の段階では、大学法人側は、原先生にこの寄付講座の他の教職員に向けて再雇用についての意思確認するよう命じてさえいました。さらに直前まで、KYB社からの寄付打切りに備えるべく、同講座維持のための外部資金の確保を原先生に指示し、原先生はその要求に応えて講座維持のために必要な多額の外部資金を企業などから確保しつつありました。にもかかわらず、大学法人側は、そうした企業などからの外部資金提供の申し込み(学術指導契約等)を黙殺した上で、3月31日という雇用契約期間最終日になって、突然両先生に雇止めを通告したのです。助教の先生に至っては、3月中旬まで寄付講座の廃止の可能性すら知らされてはいませんでした。
それ以降の事態の経緯については、4月21日付け読売新聞山形版をはじめとする県内マスコミ各社によって報道されましたので、ご存知の方も多いと思います。このことに関する山形大学職員組合の見解も、それらのメディアで報じられていますが、職員組合の見解は、大学法人側による今回の教員お二人の「雇止め」の仕方は、一般的な雇止め法理(例えば、厚生労働省告示第357号等)に完全に反しており、そうした法理に従うなら、大学法人側は、初回の雇用契約更新時同様、お二人の教員に少なくとも1年間の雇用継続を認めるべきものであることから、その雇止めを不当なものと考えて、お二人の地位回復を大学に求めています。
実はこのことは、雇止めされたお二人の教員に留まる問題ではありません。大学法人側が寄付講座の廃止を理由に、お二人の教員にこのような一方的な雇止めを通告してきたということは、同じ寄付講座の他の職員の方たちも同様な扱いを受けるおそれ、つまり突然失業するおそれがあることを意味します。実際、6人の寄付講座の職員(うち一人はタイ人)の方たちには雇止めの通知が3月末になってもなされず、4月1日以降も本学での就労が続いたので、雇止め法理に従えば、従前のように1年間の雇用継続がなされるべきところです。しかしなんと、4月25日にもなって大学法人側から、「残務処理」のためと称して、6月末までという短期の雇用契約条件が提示されてきたのです。
こうした事情からも、職員組合としては、今回の教員お二人の「雇止め」を容認することは出来ません。寄付講座の職員だけでなく、他の教職員の今後の雇用確保にも、大きな悪影響を与えかねないからです。そこで職員組合は、大学法人による不当な雇い止めの前例を作らせないために、この寄付講座の6人の職員の方たちについても、1年間の再雇用を大学法人側に求めています。
また今般の雇止めは、さらに深刻な問題を生じさせました。大学法人側は、この寄付講座に研究用に保管されている有毒なPCBの処理並びに遺伝子組み換え微生物等の保管に関する何らの対策も持たないまま、当該業務を遂行する当事者能力を持つただ二人だけの教員を、十分な事情説明はおろか必要な事前通告(最短でも30日以前)もなく、3月31日で突然雇止めとする通告をしてしまいました。そのため、環境中に絶対に放出してはならないこれらの物質を適切に処理・管理する能力を、4月1日以降、山形大学は完全に失ってしまったのです。実際、現在同講座の「残務処理」に当たらされている職員の方々は、業務上適切な指示を与えてくれる上司がいないため、何をどうしていいのか分からず、途方にくれておられます。このことは、単に工学部の労働環境を危険なものにするだけではなく、私たちを取り巻く日本の生態系全体に遠い将来にまでわたる取り返しのつかない深刻な悪影響を与える恐れすらあります。
問題のPCBや微生物は、この寄付講座の研究施設内での保管形態が多岐にわたっており、当該研究に関与してきていない第三者には、その処理は極めて複雑かつ困難です。遺伝子組み換え微生物に至っては、国のプロジェクト予算等を投入して得られた研究成果物でもあるため、知的財産としての価値をも持ち、それに関わる利害関係者も多いことから、短期間での安易な処分(焼却処分等)はできません。にもかかわらず、それらの当事者能力をもった管理責任者が不在である状況が意味する、回復不能な壊滅的環境破壊の危険性や、法令違反、訴訟等の恐れを大学法人側は殆ど自覚していないのです。
山形大学職員組合は、こうした状況に対処すべく5月9日に原、高塚両先生を伴って大学法人側と団体交渉を行いました。職員組合側の要求項目は次の3つです。
(1)昨年度まで存続していた山形大学工学部旧寄付講座「微生物触媒工学応用(KYB)講座」(以下「旧寄付講座」)の教員2名(本組合員)の雇止めを撤回し、2015年4月1日から翌3月31日までの再雇用契約と同等の条件で貴法人が再雇用すること。
(2)旧寄付講座の上記教員以外の山形大学職員6名(本組合員)を、2015年度と同等の条件で貴法人が再雇用すること。
(3)旧寄付講座研究施設内に残存する特定微生物、PCB及びPCB汚染物質の貴法人による適正な処理及び管理体制を明らかにし、山形大学の教職員に周知すること。
ここで、(1)と(2)は労働契約法並びに一般的な雇止め法理に基づく、(3)は職場の労働安全及び環境保全の観点からの、いずれも当然の要求です。
しかしながら大学法人側は、PCBや微生物の適切な処理や管理に、原先生らのお二人の教員の協力が不可欠であることを認めつつ、自らが一方的に雇止めをしておいて、たった2か月間だけの再雇用期間をお二人に提示し、その期間でそれらの処理を行って欲しいという、あまりにも虫のいい提案をしてきたのです。しかも、交渉の担当者である阿部理事他2名の法務支援室の職員は、本件に関わる事態の経緯や背景について、重要な事柄を殆ど理解しておらず、一番重要な(3)の要求に対しても、具体的には何も答えることができない一方で、「それではPCBや微生物の処理にそちらが必要だという期間はどのくらいか?」などという質問を組合及び原先生らにしてきましたが、それらの問題に関する基本的な知識すら彼らが有していないため、彼らが理解できるように回答することは、到底無理であると判断せざるを得ませんでした。
職員組合は寄付講座の存続を大学法人側に求めているのではなく、今後の大学における適法かつ妥当な労働契約のあり方や職場の安全確保という観点から、上記3項目の要求実現を求めているわけです。従って職員組合としては、それらの要求が満たされるならば、寄付講座の存続のような事柄は、両先生と大学法人との間の話し合いに委ねる方針である旨を伝えました。一方、上記3項目の要求実現こそが、両先生の協力を大学法人側が得るための前提条件であり、大学がその責任を真に果たすつもりならば、その選択肢は限られていることを主張しました。それに対して大学法人側は、持ち帰って検討する旨の返答をしたため、職員組合からは、次回は、当事者能力を持った人物を交渉の場に伴われて交渉に臨んで頂きたいとの要望と、早期の団体交渉日程の調整を行いたい旨大学に伝えて、交渉を終えました。
関連情報
・読売新聞記事>山形大、法令手続き経ず教員2人に解雇通告 2016年04月22
日 07時29分
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160421-OYT1T50125.html
・山形新聞>山形大元教授「不当雇い止め」で団交 大学側に申し入れ 2016
年04月27日 10:15
http://yamagata-np.jp/news/201604/27/kj_2016042700554.php
・Yahoo!ニュース>山形大元教授「不当雇い止め」で団交 大学側に申し入れ
山形新聞 4月27日(水)10時15分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160427-00000554-yamagata-l06
・山形新聞>山形大学長「早期解決したい」雇い止め問題で見解 2016年05月18日 09:24
http://yamagata-np.jp/news/201605/18/kj_2016051800393.php
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