職組情報
2016職組情報No.13【全大教第27回医科系大学教職員懇談会(報告)】
2016.11.10
◆◆◆ 全大教第27回医科系大学教職員懇談会(報告) ◆◆◆
2016年11月9日
理学部支部(元副委員長)
品川敦紀
11月5日(土)午後1時から11月6日(日)午後1時まで,神戸大学医学部附属病院において,全大教第27回医科系大学教職員懇談会が開催されました。本組合を代表して参加してきましたので,簡単にご報告致します。
初日は,まず,全大教長山書記長,神戸大職組委員長からのあいさつの後,全大教病院協議会幹事からの「基調報告」と,全大教顧問弁護士で,高専協議会による未払い賃金請求訴訟の弁護団弁護士でもある早田由布子氏の記念講演がありました。
「医療労働者の長時間労働の改善に向けて―看護師過労死裁判に学び労働時間規制の基礎を知って活用しよう―」と題した早田氏の記念講演では,平成13年に起こった国立循環器病センター看護師の過労死裁判を事例に挙げ,過労死裁判の概要,過労死認定の基準,労働基準法による規制内容などの解説がありました。
過労死裁判では,通常,過労死の労災認定を争う裁判(被告は労基署長)と,安全配慮義務違反に対する損害賠償請求裁判(被告は使用者)の2つが同時に進行する形になるそうです。過労死裁判の場合,心疾患や脳血管障害による死亡や自殺と過労の関係(業務起因性)が争われることになりますが,労基署が出している通達に掲げられた基準は,発症前1ヶ月から6ヶ月の1ヶ月あたりの時間外労働が概ね45時間を超えて長くなればなるほど業務と発症の関係が強まる事,時間外労働が発症前1ヶ月におおむね100時間を超えているか,発症前2ヶ月乃至6ヶ月において1ヶ月あたりおおむね80時間を超えていると関連性が強いと判断される(つまり業務起因性が認定される)そうです。
上記の国立循環器病センター看護師の場合,認定された発症前6ヶ月の1ヶ月あたりの時間外労働は平均でおおむね55時間程度であり,直ちに業務起因性が認められる状況には無かったのですが,当該看護師の看護業務の質的加重性(高度の緊張を伴う専門性のある業務),人員配置上の加重性(看護師の定着が悪い職場で,入職3~4年目の看護師がリーダーとして新人指導を行う),変則勤務の加重性(発症前6ヶ月間に,勤務間隔の短い日勤>深夜と準夜>日勤がそれぞれ22回と8回あり,あわせて30回,1ヶ月あたり5回あったこと)などが認定されて,労災(公務災害)認定となったそうです。
このことは,通常の労働での過労死基準より相当低いレベルでも,看護師等夜勤を含む変則的労働を行っている労働者の場合,過労死や過労自死につながる事を意味しています。その意味では,変則勤務が多い医療労働者(特に,医師、看護師)の時間外労働は,極力厳格に管理し,最低限に抑える必要がある事が痛感されます。
本学附属病院を含め,全国の国立大学医学部附属病院もまた,医療の高度化や7対1看護の要請により,看護師の過重労働が起こっており,それが原因での早期離職も頻発し,4年目程度の看護師が新人教育をしなければならない場合もよく見られる状況にあります。こうした深刻な事態を早急に改善しなければ、過労死等を招くだけでなく,経験不足からくる医療ミス,事故も頻発が危惧されます。その意味では,医療労働者の待遇改善は,単に労働者の待遇改善という意味だけでなく,医療事故の回避にも役立つという意味で,使用者側とも利害が一致する側面もありますから,使用者側と一体となった労働環境の改善が必要に思われました。
次に、私が参加した分科会での報告,議論について簡単にご報告致します。
私は,初日は第1分科会『安全安心の医療を目指して,教職員の労働条件改善ー看護師を中心に」に,2日目は第3分科会「魅力ある組合と組織づくり」に参加しました。
初日の第1分科会では,主に,年休の取得状況,残業申告(記録),交代制勤務の現状などについて報告,討論がありました。年休取得に関しては,一部を除き,大半の職場で年10日以下の年休しか消化できてないようで,いくつかの職場では,年休希望を出しても,結局,勤務表が作成される段階で週休を充てられたりしていて年休取得ができなくなっているケースも多いようでした。ただ,中には,山口大の男性看護師さんのように,年休希望が認められなかったとして労基署に訴えて認めさせたという強者もいてびっくりしましたが,別の職場でも,当初,組合員男性看護師が年休希望をどんどん出すようにしていたら,周辺の看護師も希望を出すようになって,徐々に希望が通るようになって来たという話も紹介されました。全体には,勤務表を作る師長次第の面があるそうで,組合員であった師長等の場合は,どんどん希望の年休をつけてくれるが,週休を充てる師長も多いということでした。しかし、考えてみると,師長によって年休希望が通るという事は,やる気があればできるという事ですから,やはり,その事実を突きつけて病院側に希望実現させるよう要求して行く必要もあろうと思いました。もちろん,本当は,年休希望はよほどの理由が無い限り認めなければならないのが労基法で定められているのですが,現実には,そうなっていないのが実情です。
次に,残業申告では,所定勤務時間終了後の後残業については,看護師自身の申告はされているのが普通ですが,師長によって,かってに削られていたりというケースもあったようです。もっとも先進的なのは,名古屋大学病院で,パソコンによる出退勤の電子入力と合わせて,紙媒体での記録(特に,休憩時間時の業務)も行い、月あたりの残業について翌月初めに本人チェックによる押印まで行っているそうです。よく有るケースでは,新人看護師の残業については,先輩看護師なら時間内にできる業務を時間外まで引きずってやっているだけだから残業代は請求できないと思っている,あるいは,暗黙に記録してはいけない雰囲気になっている、ということがあるようです。もちろん,これは労基法違反です。
他方,いわゆる前残業(勤務時間前の業務)については、本人申告がされてないケースが多いようで,これもしっかり請求する必要がある(というか、労基法で支払わなければならない)という事でした。
交代制勤務については,大半の職場で二交代制をとっているようですが,その中身は様々で,16時間夜勤8時間日勤の二交代もれば,長日勤と夜勤の二交代も(あ)るそうですが,総じて,長日勤は、そこに残業が加わるととてつもなく長い日勤となり,体力的にも持たないし,家庭生活と両立しないなど問題が多いという事でした。一部名古屋大学では,長日勤は残業1時間以内ということでやっているということでした。
2日目の第3分科会では,各大学での新人オリエンテーションの経験やリクレーション活動などについて報告討論がありました。その中でとくに注目したのは,神戸大職組が行ったオリエンテーションで,看護師の過労死についてのニュース報道youtubeの紹介で,そうした過労死が起こっているのが,組合の無い職場であった事を訴えて,組合はそうした過労死等を起こさせないよう職場の労働環境の改善に寄与していると訴えると加入者が増えたという話でした。神戸大学や山口大学ではレクレーション活動が盛んのようですが,参加者が固定して来ている事などの問題もあるようでした。いずれの場合も,職場の先輩看護師が若手を誘うなどすると参加者が増えるということでした。
全体として,このところ参加者数も減少傾向にあり,また,参加メンバーも,私自身も含めて,同じ顔ぶれになって来ている傾向もありますが,その一方で,若手の特に男性看護師さんが多数参加し頑張っている様子を見ると,大学病院も随分変わって来ており,希望も見える感じもしました。
以上
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