職組情報

2016職組情報No.31【有期雇用契約職員の無期転換に関する取扱いに関する意見交換会(報告)】
2017.06.29

 

                  

◆◆◆有期雇用契約職員の無期転換に関する取扱いに関する意見交換会(報告)◆◆◆

 

山形大学職員組合

                        執行委員長 江間史明

 

 2017年6月23日13:30~14:30に本部事務局4回第2会議室にて、標記意見交換会が開催されました。以下、その概要を箇条書き方式でご報告申し上げます。

 

1. 職員組合としての見解

  労働契約法第19条に違反する可能性が高く、受け入れることはできない。

 

2. 大学側の主張

  無期転換は原則として避ける方針。2018331日以降に5年満了となる職員については、引き続き雇用し無期転換の申し込みを可能とするが、プロジェクトや外部資金等による雇用は「経費」と「業務の継続性」を条件とし、雇止めを行う。

2.1 有期雇用契約職員の無期転換に関する取扱い方針について

  当日示された資料は、労務担当理事が平成29年6月21日役員会で報告・承認を得たもので、以前に提示されたものと内容的に違いはない。「雇用経費」と「担当業務の継続性」という用語を用い、暗に労働契約法には違反しないという主張を繰り返している。

2.2 無期転換を適用しないための理由

2.2.1 現行の有期雇用制度

  常勤職員の業務の補足、育児休業等の代替要員、臨時的な業務の遂行、特別のプロジェクト等、業務量の変動に対応するために有期雇用制度として整備している。

2.2.2 「雇用経費」と「担当業務の継続性」

  「外部資金による特定のプロジェクト」や「学長が特に必要と認めた重要な事業」のための雇用で、「毎年度の雇用経費や事業期間・計画等が限定されるもの」が該当する。「奨学寄附金等の外部資金で雇用する非常勤職員」に対しても「雇用経費」と「担当業務の継続性」の理由により無期転換の対象にはできないと明言している。

2.3 例外的な無期転換の対象者

 i) 医員、研修医、MA、医療業務従事者、特に採用が困難な勤務箇所の職員、障がい者雇用の対象者

 ii) 以下の職員のうち、業務内容が恒常的で、上限(5)を迎えた後も業務が継続し、業務に精通した人材を活用すべきものとして「学長が特に必要と認める」もの。

   事務補佐員、技術補佐員、教務補佐員、技能補佐員、臨時用務員、研究支援者、研究支援推進員など

 iii) 年俸制の医員

 iv) 非常勤講師と非常勤カウンセラー(上限年齢は70歳とする)

 

3. 大学側主張の問題点

3.1 現行の有期雇用制度と実際の有期雇用職員の業務との矛盾

2.2.1の現行の有期雇用制度では、そもそも、「業務内容が恒常的」な業務は存在しないことになるが、現実には存在しているから、2.3の「業務内容が恒常的」なもの等を提示している点に致命的な矛盾がある。

3.2 労働契約法改正の趣旨に違反

  労働契約法第19条は、雇止め(と称される解雇)に対する合理的な条件は、「業務」自体の消滅を必要条件としており、雇用経費に関しては必要条件にもなっていない。また、雇止めには通常の解雇と同じ要件である「客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であると認められる」ことを十分条件として要求している。すなわち、「学長が特に必要と認める」ことなど不要であり、学長がこれを行使することを必要条件とすること自体が使用者側の「権利の濫用」にあたる違法行為となる。

3.3 「プロジェクトの期間」と「補助金等の外部資金の交付期間」は同一とは限らない

  例えばテニュアトラックだとかリーディング大学院だとかは、補助金の交付期間後も大学独自の資金で事業を継続することが義務付けられており、文科省にその点を約束している筈である。外部資金の補助のもとに実施される研究開発プロジェクトでも、「事業を展開するための初期資金の補助」というものが多く、補助金交付期間の終了後も独自の資金により事業が継続し、事業化までもっていくことが条件となっているものが多い。このため、「事後評価」が課せられているものが殆どである。すなわち、「補助金交付期間」はプロジェクト等の「事業展開期間」とは異なるものがほとんどである。大学当局は「プロジェクト期間=補助金交付期間」と一元的に捉えているようだが、その認識のまま実施すれば、外部資金獲得時の契約内容を反故にし、最初から騙すつもりで補助金を受ける「詐欺行為」という犯罪行為を意図して実施していることになる。

3.4 無期転換の「対象」と「対象としない」ものをあらかじめ線引きすることの違法性

  これは3.2と同様なものである。そもそも、有期雇用契約を隠れ蓑として雇用契約の更新をしないことにより、解雇という言葉を使わずに法律上認められたことであるとして「実質的な解雇」をすることを「雇止め」と称している。これでは安定した雇用を確保できず、健全な社会の発展に資することができないと政府が判断して、労働契約法を改正したのが趣旨である。そのため、労働契約法第19条で、雇止め(と称する解雇)に対する合理的な条件は、「業務」自体の消滅を必要条件とし、通常の解雇と同じ要件である「客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であると認められる」ことを十分条件として要求している。雇止め(と称する解雇)における合理性は、この必要十分条件を満足する必要がある。ちなみに、「客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であると認められる」ことは、次の解雇4要件を指す。

  (1) 人員削減を行う経営上の必要性

  (2) 使用者による十分な解雇回避努力

  (3) 被解雇者の選定基準およびその適用の合理性

  (4) 被解雇者や労働組合との間の十分な協議等の適正な手続

  すなわち、有期雇用であることのみでは雇止め(と称する解雇)の合理的な理由にはなりえない。この点において、無期転換の「対象」と「対象としない」ものをあらかじめ線引きすること自体が使用者側の「権利の濫用」に相当することになり、労働契約法に違反することになる。(後段資料2参照)

 

4. 結論

  以上の理由により、労働契約法第19条に違反する可能性が高く、本学労務担当理事より提示された「有期雇用契約職員の無期転換に関する取扱い」を受け入れることはできないと結論する。

 

5. 今後の予定

  交渉は、大学の規則案作成を待って行う。

 

6. その他

  役員会日程ありきの余裕のない交渉スケジュールにならないよう、その場で申し入れる。また、自分の雇用経費が何によって賄われているのか職員自身が把握できていないケースも多いと考えられ、各部局の実態調査を行い、報告するよう求める。そのほか、短時間勤務職員の超勤が恒常的になっている場合、定時勤務への変更等可能であるかどうか尋ねたところ、本日は交渉ではないとしながらも、現場の要求等があれば考えることも必要かもしれないとの感想が述べられる。

 

以上

 

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<資料2

 

有期労働契約()の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消し、働く方が安心して働き続けることができるようにするため、労働契約法が改正され、有期労働契約の適正な利用のためのルールが整備されました。

※有期労働契約・・・1年契約、6か月契約など契約期間の定めのある労働契約のことをいいます。有期労働契約であれば、パート、アルバイト、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、対象となります。

(厚生労働省)

 

労働契約法抜粋ーーーーーーーーーー

 

(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)

第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。

2 当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が六月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が一年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。

 

(有期労働契約の更新等)

第十九条   有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

 

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詳細は以下の引用元をご覧ください。

 

1)労働契約法の改正について~有期労働契約の新しいルールができました~(厚労省)

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/index.html

2)労働契約法~条文

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19HO128.html

3)労働契約法改正のあらまし(平成2412月・厚生労働省) PDF

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000033690.pdf

4)平成28年度厚生労働省委託事業「無期転換の準備、進めていますか?~有期契約労働者の円滑な無期転換のためのハンドブック~」PDF

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/0000138213.pdf

5)しっかりマスター 労働基準法 解雇編 

http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/tokyo-roudoukyoku/seido/kijunhou/shikkari-master/pdf/kaiko.pdf

 

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